cm(コンストラクションマンジメント)奮闘記

後飛保町の家


① 新建材に対する懸念

お施主さまが当初から心配していたのは「シックハウス」でした。
新しい建物特有のツンとしたニオイ。建材に使われる接着剤、防腐剤、塗料などはF☆☆☆☆表示の材料のみを使っていても、なかなかぬけません。体に害のない程度でも、ニオイで気分が悪くなる人もいます。

お施主さま:使っている家具を持ち込み、出来るだけ新しい材料は使わないで造りたい

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天井と床は無垢材、壁は塗り壁、
建具の仕上げは無添加の蜜ロウワックスをご提案しました。完璧ではないでしょうが、かなりのニオイが軽減されますとお伝えました。

 

 

 

しばらく前から古い建具が事務所に保管してありました。
ある古民家が取り壊される寸前に譲って頂いた貴重な建具です。

A 無双窓を腰に設けた4枚引き違いガラス戸
B 夏はよしず、冬は和紙。障子の取り替えが出来るウルシ塗りの4枚引き違い障子戸
C 細かな縦格子と波ガラスが嵌った2枚引き違い戸
D 腰は板張り、真ん中は波ガラス、上は透明ガラスの片引き戸

いずれも新しく造ろうとすればとても高くついてしまう珍しい建具たち、
機会をみてどこかで使っていただこうと、大切に保管してありました。
「よろしかったら、この古い建具たちを活用しませんか?」
大いにご賛同いただき、思いのほか多くを利用することになりました。さっそく寸法を測り、古い建具を盛り込んだ設計を進めました。

 


②古民家風のデザイン

古い建具を利用することになって、少しノッテきました。

建築士:玄関土間を敷土台風にしよう!

古い建具に似合うよう、昔ながらの敷土台を玄関土間で再現することにしました。
玉石を並べ土台を置き、その上に古い建具が並びます。土間はもちろんタタキ風の仕上げ。踏脱部分は土間が削られやすいのでテラコッタタイルをはめ込みました。少しフランス風です。

上棟後

上棟後

竣工後

竣工後

 

 

 

 

 

 

 

 


③ 棟梁のこだわり

日頃からお互いの想いを話し合っている間柄の棟梁。考えていることは一緒です。

棟梁:手刻みでやるけど、いいか?

平屋でもあり規模もさほど大きくないので、費用も時間も影響は少ないはずと
少しひいき目の判断ながら、手刻みで加工することにしました。
金物の使用も出来るだけ控え、「長ほぞ込栓」の仕口を随所に使いました。
木と金物の相性は本来良くないもの。そんな棟梁の想いは建築士も一緒です。

棟梁の作業場

材料

「長ほぞ込栓」の仕口

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


④ 古材の再利用

地鎮祭を終えしばらく経ったある日、お施主さまのご親戚のお宅を解体することになり、何かに使えないかとご相談をいただきました。

お施主さま:解体される建物があるので、一緒に来て!

解体の建物を物色するのは慣れています。さっそくバールを持って駆けつけました。
山際に建つ、蔵を有する立派な建物です。
一通り建物を見て回り、古材として使えそうなものを探しました。
・床の間の違い棚、無垢の厚板
・居間のガラス窓
・黒壇の階段手すり
・玄関飾り棚のサルスベリの曲がり木・・・ どれも丁寧に取り付けられていて、取り外すのに手間取りました。外せなくて諦めたものもあります。
いい仕事というものは、時を越えて解体の時に再評価されるのだと、一人感心する一日でした。

 

・居間で使われていたガラス窓は、廊下の明かり取り欄間になりました。

 

 

 

 

 

・黒檀の階段手すりは、建具の取手になりました。

 

 

 

 

 

・床の間の違い棚に使われていた無垢の厚板と玄関の飾り棚に使われていたサルスベリの曲がり木。組み合わせて電話台になりました。

 

 

 


⑤ 和風への想い

今回の住まいづくりのテーマは「和」。そしてプチ「レトロ」。

お施主さま:やっぱり雨戸の戸箱は木で造ろう!

費用を睨みながら、迷い続けた雨戸の戸箱。
現場が進むとイメージも具体的になっていきます。
玄関戸・居間の建具は木製。それに並ぶアルミサッシュの雨戸の戸箱はアルミ面の面積が広く、木製建具と似合わないようで、気になります。
費用のことも気になるのですが、ようやく英断が下されました。
「やっぱり、戸箱を木で被ってしまおう」
いま思えば、この決断は大正解でした。

 

・天井が板張りなので電気配線、天井付けエアコン、照明器具の位置を伝えることに細心の注意を払いました。

 

 

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・壁は塗り壁です。床と建具などの木部には蜜ロウワックスを塗りました。

 

 

 

 

 


⑥ ご近所からのクレーム

角地で道路からもよく見える開放的な家です。ご近所からも中の工事の様子がよく見え、のぞきに来る近隣の方も少なくありません。
工事も終盤。古い建具が取り付いて、最終の仕上げの段階でした。

近隣の方:建具が汚らしい。柱の色とも合わず、これでいいのか!

ずっと見慣れてきた古い建具たちなので「こういう色のもの」と決めつけていましたが、
なるほど、新しい桧の柱とは随分と色が違いすぎます。「黒っぽい色も味のうち」と、思っていたのは建築士だけでした。古い建具たちはクリーニングして色を落とし、新しい柱の色に近づけました。ご近所からの温かいクレームでした。


⑦ 米ぬかと蜜ロウワックスがけ

桧の無垢フローリングは比較的よく使う材料です。時が経つほど味わい深くなります。
米ぬかやお米のとぎ汁、または今回のように蜜ロウワックスなど。自然の材料でお手入れするのが似合っています。
お施主さま共々スタッフ総動員で、フローリング、建具、柱、木部すべてを蜜ロウワックスがけしました。こうして新築の時にワックスがけを体験しておけば、その後のお手入れにとっつきやすくなります。


⑧ 外構工事

建物が完成して入居。外構工事まで時間があきました。
入居してからゆっくり構想を練る時間でもありました。

施工前

 

 

 

 

 

 

建築士:「レトロな和」で外もまとめる。

施工後

 

 

 

 

 

当初は高いコンクリート塀を設けた閉鎖的な計画でしたが、「レトロな和」を盛り込んだ開放的なデザインに変更することにしました。

ご近所の視線に頼った防犯上の配慮もあります。

周辺でよく見かける「ヤマト塀」を採用し、高さもお隣の塀の高さに揃えました。自転車置場の屋根も雰囲気を揃え共に筋交いで補強。ヤマト塀と自転車置場の屋根が一体となるデザインにしました。

駐輪場

 

 

 

 

 

東塀

 

 

 

 

 

南塀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南側は足下をあけて中庭の花壇が道から見えます。通行人の目線は遮り風通し良く。

東側はしっかり目隠し。「ヤマト塀」は板と板の間から風が通ります。


CM後記:
造っている途中で新たなアイデアを思いつくことはよくありますが、今の契約社会では対応しづらく、あまり歓迎されません。それでも比較的柔軟に受け入れられるのが、この分離発注CM方式です。全体構想は維持しつつ、逸脱しない範囲でより良いアイデアを受け入れ、フットワークよくまとめます。
昔の住まいづくりは棟梁の管轄の下、各職人さんがお施主さまと顔の見える関係を保って家を造っていたように思います。「予定ではこうだけど、この現場ではこっちにするべき」と各職人さんはお施主さまのことを第一に考え、より良い方へ柔軟に変更して現場を納めてきました。職人魂を育むことも、分離発注CM方式です。責任感あふれる職人さん達とともに、この建物も無事に完成しました。


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